エレミヤの預言はこうである。「主はこう言われる。見よ、わたしはこの都をバビロンの王の手に渡す。彼はこの町を占領する。ユダの王ゼデキヤはカルデア人の手から逃げることはできない。(中略)お前たちはカルデア人と戦っても、決して勝つことはできない。」  (エレミヤ32章3~5節) *カルデア人=バビロン軍

預言者エレミヤはユダ王国最後のゼデキヤ王に、上記のように語りました。そもそもゼデキヤはバビロンの王によって即位させられた傀儡の王でした(列王下24:17)。力の差は歴然としていました。それなのに彼はバビロンの王に反旗を翻したのです(同上24:20)。戦おうとしたのです。勝てない相手と知りながら、何故にと思います。偽預言者たちは、エレミヤとは正反対の預言をし、バビロン軍に勝てると民衆に語っていました。しかし結果は、国は敗れ、多くの国民が異国バビロンに捕囚されます。捕えられたゼデキヤ王の目の前で息子らが惨殺され、彼も両目を潰されます。もしエレミヤの言葉に聞き従っていたら、と思います。

*傀儡(かいらい)=実際の支配者の操り王制

わが国では1941(昭和16)年4月、首相直轄の「総力戦研究所」が作られ、若きエリートが集められます。そして、米国と戦争したら、どうなるのかを軍事、外交、経済他のデーターをもとに戦局を予測させます。彼らが出した結論は、戦えば必ず敗れ、決して勝てない、でした。それを、近衛首相や東条陸軍大臣の前で、堂々と発表しました。それに対して東条大臣は、「実際の戦争は机の上のデーターとは違う。それに日本軍は大国ロシアを打ち負かしている」と答えている。『シミュレーション』というノンフィクションドラマで、その事実を知りました。戦後80年経ったが、わが国の敗戦は綿密な計算によって予測されていたのです。にもかかわらず開戦へと突き進みました。負けると分かっているのに、です。狂気であり、悪魔的な空気が戦争に進ませたと言えます。また、日露戦争の勝利という経験が、仇となっています。同じ事がエレミヤの時代にもありました。その100年前、預言者イザヤの時代に、大国アッシリアを一夜にして倒した経験です(イザヤ37:36)。若者たちが総力戦研究所で発表した予測では、勝利できるのは1年半から2年まで。長期戦になれば日本はなす術もなく必敗する。そして、国民は飢えと恐怖に晒される、と予測しました。歴史に「もし」はないのですが、その声に耳を傾け、戦争を止めていたら…。エレミヤの嘆きは今も続く