スパイ容疑をかけられた兄たちは、ヨセフの前にひれ伏し、釈明した。必死でした。ヨセフは兄たちの本心を試すために、あくまでもスパイだと主張します。そして、シメオンを縛って人質にし、「末の弟をここへ連れて来い!」と命じます。兄たちはそれがヨセフだとは全く気づかない。困惑しながらも、穀物を持って立ち去ります。途中の宿で、一人がろばに餌をやろうとして、穀物袋を開けます。そして、代金として払った銀があるのに気づきます。10人皆、同じでした。
このことに驚き、互いに震えながら、「これは一体、どういうことだ。神が我々になさったことは」と言った。(創世記42章28節)
出来事の背後に、神を意識する兄たちの信仰が見えます。何が何だか分からない混乱した状況の中でも、神の御手を見ています。
一行はカナン地方にいる父ヤコブのところへ帰って来て、自分たちの身に起こったことをすべて報告した。
回し者(スパイ)の容疑をかけられ、そうでないことを証明するために、シメオンが人質に取られ、末の弟を必ず連れて来るよう命じられたことも話します。更には、めいめいの袋の中に返されていた銀の包みを、父に見せます。父ヤコブは恐怖に襲われ息子たちに、
「お前たちは、わたしから次々と子供を奪ってしまった。ヨセフを失い、シメオンも失った。その上ベニヤミンまでも取り上げるのか。みんなわたしを苦しめることばかりだ。」(42章36節)と、呻きました。
ヤコブにとってベニヤミンは、最愛の妻ラケルの産んだ子。その兄ヨセフと同じ目に遭わせることは耐え難いこと。だから、息子たちに何と言われようとも、
「いや、この子だけはお前たちと一緒に行かせるわけにはいかぬ。この子の兄は死んでしまい、残っているのはこの子だけではないか。お前たちの旅の途中で、何か不幸なことがこの子の身に起こりでもしたら、お前たちは、この白髪の父を、悲嘆のうちに陰府に降らせることになるのだ」(42章38節)と言います。
しかし、失うまいとして握り締めていた思いから、解き放たれたヤコブ。遂に、末の子を兄たちと一緒にエジプトへと送り出します。「では、弟を連れて、早速その人の所に戻りなさい。どうか、全能の神がその人の前でお前たちに憐れみを施し、もう一人の兄弟と、このベニヤミンを返してくださいますように。このわたしがどうしても子供を失わねばならないのなら、失ってもよい」(43章13-14節)とまで言います。
