ヨセフは兄ユダの言葉を聞きながら気づいた。兄さんたちは以前とは変わったと。ユダは言った。「父の魂はこの子(ベニヤミン)の魂と固く結ばれいますから」(30節)は、ユダ自身が二人の息子を失った体験から出ている(38章)。子を失った父親の気持ちが、痛いほど分かるユダの言葉はヨセフの胸を打ちました。もうこれ以上、素知らぬ振りを続けることはできない。抑えがたく湧き上がる肉親への情がほとばしり出ます。
ヨセフは、そばで仕えている者の前で、もはや平静を装っていることが出来なくなり、「みんな、ここから出て行ってくれ!」と叫んだ。(創世記45章1節)
驚いた家臣たちが全員退席すると、ヨセフは声を上げて激しく泣いた。その泣く声は、王宮全体に響きました。何事かと固唾をのんで、聞き耳を立てる家臣たち。やがて、目の前にいるあのエジプトの高官は兄弟たちに言います。
「わたしはヨセフです。お父さんはまだ生きておられますか。」兄弟たちはヨセフの前で驚きのあまり、答えることができなかった。 (創世記45章3節)
聖書の中で、最も感動的な場面です。ヨセフは堪え切れずに、泣きながら身を明かします。驚きの余り言葉を失い、凍りつく兄たち。信じられない。まさかヨセフだったとは、信じられない。兄たちはエジプトの衣装を着ている高官の顔をしげしげと見つめたろう。
ヨセフは兄弟たちに言った。「どうか、もっと近寄ってください。」兄弟たちがそばに近づくと、ヨセフはまた言った。「わたしはあなたたちがエジプトへ売った弟のヨセフです。しかし、今は、わたしをここへ売ったことを悔やんだり、責め合ったりする必要はありません。命を救うために、神がわたしをあなたたちより先にお遣わしになったのです。・・・わたしをここへ遣わしたのは、あなたたちではなく、神です。」 (45章4~8節)
上記の聖句箇所には「神が」の字が省略した・・・の所を含めて5回も語られています。兄たちはヨセフをエジプトに売るという酷いことをしたのは事実ですが、しかし、その事をいつまでも悔やんだり、誰が悪いと責め合わないでください、と話し、実は、神が私をエジプトに遣わされたのです、とヨセフは言っています。過去の出来事の再解釈です。人の犯した罪を、神は逆手にとって救いに変えられたとの理解です。
