モーセのしゅうとは言った。「あなたのやり方は良くない。あなた自身も、あなたを訪ねて来る民も、きっと疲れ果ててしまうだろう。…わたしの言うことを聞きなさい。助言しよう。…」(出エジプト18章17~19節)
息子が整骨院を開院したのですが、その前に妻と一緒に訪ねました。息子と会話しながら、モーセとしゅうとの聖書箇所(出エジプト18章)が思い浮かびました。
しゅうとはモーセの妻の父親です。モーセの働き方を見て、このやり方では疲れ果てると忠告したのです。モーセが一人ですべての事を受け持っていたからです。それで忠告というか助言しました。婿のモーセは偉大な指導者で、200万人もの民のトップでしたから、プライドもあります。しゅうとの忠告に聞き従ったでしょうか。モーセは耳を傾け、その忠告の通りにしました。何という謙虚さでしょうか。そこに彼の偉大さが表されていると思いました。多くの場合、聞き従わないと思われるからです。
中国に唐という国がありました。300年間もその時代が続いたのですが、その礎を築いたのが2代目の太宗(598~649年)です。彼の優れた点は、魏徴を登用して、耳が痛くなるような忠言を積極的に受け入れたことです。とかく側近をイエスマンばかりにしがちな政治指導者とは異なりました。前述の魏徴とは、人の上に立つ者の教科書と呼ばれた貞観政要に度々登場する唐の太宗(たいそう)の重臣です。その仕事は皇帝の過ちを厳しく指摘し諫(いさ)める、という重要ながら危険なポストでした。
しゅうとがモーセに忠告したのは、組織化して有能な人材に仕事を任せなさい、です。聖書には次のようにあります。「あなたは、民全員の中から、神を畏れる有能な人で、不正な利得を憎み、信頼に値する人物を選び、千人隊長、百人隊長、五十人隊長、十人隊長として民の上に立てなさい。…あなたの負担を軽くし、あなたと共に彼らに分担させなさい」(18章21節)。後に多くの国が、この方式を取り入れました。
若い時、人の勧めや忠告に聞き従うことをしなかった私は、そのことで多くの失敗をしました。そんな私が、息子に何か忠告できるだろうか、神に訊いているところです。(2021年11月4日)