女たちは、死んだ身内を生き返らせてもらいました。他の 人たちは、更にまさったよみがえりに達するために、釈放 を拒み、拷問にかけられました。 (ヘブライ11章35節)
上記の聖句に、「更にまさったよみがえり」とあります。死んだ身内を生き返らせてもらった女たちの、具体的な名前は記されていませんが、読者には預言者エリヤとエリシャによる奇跡が思い出されていたでしょう。列王記上17章と同下4章に、その奇跡が記されています。どちらも死んだ子どもを生き返らせてもらいました。生き返った子どもを見た時、母親は「今わたしは分かりました。あなたはまことに神の人です。あなたの口にある主の言葉は真実です」と、地にひれ伏して感謝を口にしています。それよりも更にまさった「よみがえり」とは何でしょうか。
ここで想定されているのは外典と呼ばれるマカバイ記です。年代は、前170年頃です。旧約聖書の最後はマラキ書は前400年頃の書かれましたから、イエス誕生まで400年間は空白の時代になります。そこを埋めるのが外典です。イスラエルを支配した大国は、アッスリア→バビロン→メド・ペルシャと変遷します。それに続くのがギリシャですが、更にセレウコス王朝が引き継ぎます。そして、極悪王アンティオコス4世が即位し、ユダヤ人を激しく迫害します。冒頭の聖句の、釈放を拒み、拷問にかけられました=ユダ・マカバイたちのことです。マカバイ記2の方には、残虐な拷問が描かれています。目を覆いたくなる程、残酷な拷問にも屈せず、律法を守り抜きます。そして、ユダは先頭に立って悪王と戦い、勝利します。ヘンデルが作曲したオラトリオ『ユダ・マカバイオス』の「見よ、勇者は帰る」は、それを描いた曲です。以後表彰式で演奏されるようになり、今や誰もが知る曲です。さらにまさったよみがえりとは、単なる生き返りではなく、復活が示されています。永遠の命への復活です。それがもっと明確になるのは、主イエスの復活からです。旧約聖書に於いては、一部例外的な聖句はありますが、未だそこまで達していません。その意味でも、冒頭のヘブライ書の聖句は見逃せません。
信仰者もこの世では苦難と問題に直面します。そのような時、信仰につまずく人も出ます。だからイエスは、「しかし、勇気を出しなさい。わたしは既に世に勝っている」(ヨハネ16章33節)と断言されました。