信仰によって、この人たちは国々を征服し、正義を行い、 約束されたものを手に入れ、獅子の口をふさぎ、燃え盛 る火を消し、剣の刃を逃れ、弱かったのに強い者とされ、 戦いの勇者となり、敵軍を敗走させました。 (ヘブライ11章33,34節)

これ以降、個人名は明記されませんが、読者には誰のことか理解されたに違いありません。口伝による伝承によります。敵国を征服し、神の正義を行ない、約束されたものを手に入れたからです。それは、武力や人間的な知恵によって勝ち得たものではありません。徹底して神に従う、信仰によって勝ち得たものです。私たちも日々の戦いに於いて同じ原則に立てば、信仰によって勝利を得ます。

ダニエルの物語から、獅子の穴に放り込まれたダニエルを神が守られたことが「獅子の口をふさぎ」と記されています。彼を陥れた大臣たちは、自らの悪を暴露され、獅子に嚙み殺されました(ダニエル6章)。

次に、ダニエルの3人の友は、ネブカドネツァル王の像にひれ伏し拝めとの命令に従いませんでした。その結果、3人は燃え盛る炉に投げ込まれました。ところが、火は彼らの体を損わず、髪の毛も焦げてはおらず上着も元のままで火のにおいすらなかったのです。そのことがここで「信仰によってその火を消し」と記されています(ダニエル3章)。奇跡的な出来事です。

それに続けて,『ユディト記』と『マカバイ記』という外典から、信仰による勝利が挙げられています。「弱かったのに強くされ」は、弱い女性が巧みな戦術で敵の王の寝首を取った物語『ユディト記』のことです。「戦いの勇者となり、敵軍を敗走させました」は卑劣極まりない王アンティオコス4世に立ち向かったマカバイ家の一族のことです。どちらも命懸けで戦い信仰によって勝利しています。

プロテスタント諸教会では外典を聖書正典として認めていないため、続編付き新共同訳聖書が出版されるまで、殆ど読まれていませんでした。しかし、ヘブライ書は名前こそ明記していませんが、外典の主人公を認めています。信仰者がどれほど過酷な迫害に耐え、悪王と戦って勝利したかを、上記の2書は証言しているからです。主イエスは、「あなたがたには世で苦難がある。しかし、勇気を出しなさい。わたしは既に世に勝っている」と、信仰による勝利を約束されています。