信仰によって、ヨセフは臨終のとき、イスラエルの 子らの脱出について語り、自分の遺骨について指示 を与えました。 (ヘブライ11章22節)

ヨセフは17歳の時、兄たちによってエジプトに奴隷として売られました。そして、110歳の生涯をエジプトで終えました。苦労が多かったためか、年上の兄たちよりも先に死を迎えています。臨終のとき、自分の遺骨について遺言しています。エジプトの地に葬られるとしても、400年先のことを見越していました。曾祖父アブラハム、祖父イサク、父ヤコブが葬られているカナンの墓地に自分の遺骨を納めるように、と。ヨセフが死に、兄たちも死ぬと、エジプトの支配者も変わります。そして、イスラエル人を危険視し、奴隷として苦役を課します。それはモーセによって解放されるまで、400年も続きます。聡明なヨセフは,アブラハムへの啓示(創世記15章13~16節)によって400年後に、イスラエルがエジプトを脱出することを知っていたようです。それは口伝によって、代々語り伝えられていたからでしょうが、それにしても驚くべき先見の明と言えます。

ヨセフの遺言は忠実に守られました。モーセに率いられてエジプトを脱出したイスラエルの人々は隊伍を整えてエジプトの国から上った。モーセはヨセフの骨を携えていた。ヨセフが、『神は必ずあなたたちを顧みられる。そのとき、私の骨をここから一緒に携え上るように』と言って、イスラエルの子らに固く誓わせたからである(出エジプト13章18,19節)。そしてヨセフの遺骨がカナンにある先祖の墓に埋葬されたのは、約束の地に入り、土地が各部族に割り当てられた後で、ヨシュア記の最後24章32節に記されています。何と何百年間も、ヨセフの遺骨は大切に持ち運ばれたのです。『大地』という小説がありますが、人は土と密接な関係にあります。人(アダム)は土(アダマ)から創造されたからです。土の見えないコンクリートばかりの都会は、人として生きる本来の姿からは逸脱しています。その意味でも、葬られる土地はどこでも良いとは考えないで先祖との繋がりや神の選ばれた地であるべきと考えたヨセフ。彼はその生涯の殆どを外国で過ごしただけに、誰よりも望郷の念が強かったとも考えられます。その信仰が子孫に受け継がれたのです。ヘブライ11章13~16節を併読して、味わいましょう。