神はノアと彼の息子たちに言われた。  「わたしは、あなたたちと、そして後に続く子孫と、契約を立てる。」         (創世記9章9節)

「契約」という言葉は、旧約聖書に241回出ます。その最初が冒頭の聖句です。ノアとの契約です。ノアはアダムから数えて10代目の人です。

1主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になり…、人も動物もすべて地上からぬぐい去ろう」(65節)と心を決めます。悪いから滅ぼすのです。そこでノアは、神に命じられた巨大な箱舟を造ります。すると、大雨と大洪水によって地上は水で覆い尽くされ、箱舟に入ったノア一家8人以外は皆、死に絶えます。それは悪を滅ぼす神の裁きでした。 1年後、地上から水が引き、ノアは動物たちと共に箱舟から外に出ます。その時ノアが最初にしたのは、主のために祭壇を築き、いけにえを献げる礼拝でした。焼き尽くす献げ物から立ち上る香りは、神の怒りを宥めました。そこで神は、

2「人に対して大地を呪うことは2度としない。人が心に思うことは、幼い時から悪いからだ。」(8章21節)と言われた。
そして、ノアとの契約が結ばれるのですが、上記の聖句1と2を較べて読むと、次のことに気づきます。それは、人間の罪と悪に対する神の態度に変化が見られることです。1では、常に悪い事ばかり思い計っているから「滅ぼす」と言われたのに、2では、人が幼い時から悪い事ばかり思っているから「滅ぼさない」と言われていることです。人が悔い改め、殊勝な態度を取っているから、呪い滅ぼすことは2度としないのではなく、悪いから(にもかかわらず)滅ぼさないと言われています。そこに、ノアの契約の本質があります。悪ばかり思い計っている私たち罪人のために、御自身をいけにえとして献げ尽くされた主イエスの故に、罪あるままで救われる福音が示されています。だから、ノアの契約は9章16節で、永遠の契約(無条件の契約)と呼ばれています。恵みが先行する契約です。

ノア契約のしるしは、雨の後に出る虹です。虹は7色で完全数です。虹を見て、神は大雨と大洪水で滅ぼすことは、もう2度としないと約束しておられます。オリーブの枝を口にした鳩は平和の象徴です。そして虹は希望のしるしです。ここを読むたび、悪いから滅ぼさないとの福音の調べを、主の十字架に聞きます。